【2026年5月1日 今日のお知らせ】本日はメーデー。労働者保護の原点に立ち返り、割増賃金の正しい計算と未払い残業代リスクへの実務対応を徹底解説します。
残業代(割増賃金)の未払いは、労働基準監督署の臨検で最も指摘される労務違反であり、労働者からの請求権の消滅時効も3年(将来的に5年へ延長予定)に拡大されています。本記事では2026年(令和8年)最新ルールに基づき、割増賃金の計算方法・算定基礎の除外賃金・月60時間超50%割増・固定残業代の有効要件・未払いリスク対策まで完全解説します。
| 種類 | 対象 | 割増率(最低) |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 1日8時間・週40時間を超える労働 | 25%以上 |
| 時間外労働(月60時間超) | 月60時間を超える時間外労働 | 50%以上 |
| 休日労働 | 法定休日(週1日)の労働 | 35%以上 |
| 深夜労働 | 22時〜翌5時の労働 | 25%以上 |
※時間外+深夜=50%以上、休日+深夜=60%以上、月60時間超時間外+深夜=75%以上の重複加算となります。
従来、月60時間超の50%割増は大企業のみ義務でしたが、2023年4月1日から中小企業にも全面適用されています。未対応の中小企業は2026年現在、深刻なコンプライアンス違反状態です。
50%のうち25%相当を「代替休暇」として与えることが可能(労使協定が必要)。ただし運用が複雑なため、現金支給で対応する企業がほとんどです。
割増賃金の基準となる「1時間あたりの賃金」は、月給制の場合:
1時間賃金 = 月給(算定基礎額)÷ 月平均所定労働時間
(365日 − 年間休日日数) × 1日所定労働時間 ÷ 12
例:年間休日120日、1日8時間 → (365−120)×8÷12 = 163.33時間
労基法施行規則21条で「除外賃金」は限定列挙されており、これ以外は除外できません。
| 除外できる手当 | 除外できない手当(算定基礎に含む) |
|---|---|
| 家族手当(家族数に応じて支給) 通勤手当(実費弁償) 別居手当 子女教育手当 住宅手当(住宅費用に応じて支給) 臨時に支払われた賃金 1か月超ごとに支払われる賃金(賞与等) | 役職手当・職務手当 営業手当・資格手当 皆勤手当・精勤手当 住宅手当(一律定額) 家族手当(一律定額) |
注意:名称ではなく支給実態で判断。「住宅手当」でも一律1万円なら算入対象。「家族手当」でも家族数連動でないなら算入対象。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本給 | 220,000円 |
| 役職手当 | 20,000円(算入) |
| 家族手当(一律) | 10,000円(算入) |
| 通勤手当 | 15,000円(除外) |
| 算定基礎額 | 250,000円 |
| 1時間賃金 | 250,000 ÷ 163.33 = 1,531円 |
| 時間外20時間 × 1.25 | 1,531 × 1.25 × 20 = 38,275円 |
固定残業代制度は最高裁判例で厳格な要件が確立されています(日本ケミカル事件・H30.7.19等)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 明確区分性 | 通常賃金と固定残業代が明確に区分されていること |
| 対価性 | 固定残業代が時間外労働の対価として支払われていること |
| 差額精算 | みなし時間を超えた分は追加で精算すること |
| 就業規則・労働契約書記載 | 固定残業代の金額・対応時間数・差額精算ルールを明記 |
無効になるケース:「営業手当に残業代を含む」とだけ記載/みなし時間超過分を払っていない/時間数の記載なし → 全額が割増賃金の算定基礎に含まれ、追加で残業代発生。
2019年4月の働き方改革関連法により、全ての使用者は労働時間を客観的方法で把握する義務があります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 消滅時効 | 3年(2020年改正、当面は3年・将来5年へ) |
| 付加金 | 裁判で未払い額と同額の付加金を命じられる可能性(労基法114条) |
| 遅延損害金 | 退職後は年14.6% |
| 是正勧告・送検 | 労基署の臨検で勧告・公表・送検リスク |
| レピュテーション | 転職口コミサイト・SNSでの拡散 |
「管理監督者」は割増賃金の対象外(深夜割増は対象)ですが、要件は厳格です(マクドナルド事件・H20.1.28等)。
名ばかり店長・名ばかり管理職での残業代未払いは多額の支払い命令の典型例です。
Q1:法定休日と所定休日の違いは?
法定休日=週1日(または4週4日)の最低限休日。所定休日=就業規則で定めた休日(週休2日制の土曜等)。法定休日労働は35%、所定休日労働は時間外として25%(週40時間超部分)。
Q2:朝の早出残業も割増対象?
所定始業時刻前の労働で、1日8時間または週40時間を超えれば時間外として25%割増。深夜帯(22-5時)に及べば+25%。
Q3:管理職に残業代を払わないのは違法?
「管理監督者」の3要件を満たさない管理職には残業代が発生します。ほとんどの中間管理職は該当しません。
Q4:1分単位で計算する必要がある?
原則1分単位。1か月の合計を30分未満切捨・30分以上切上の端数処理は可(事務簡便上の特例)。日々の15分・30分切り捨ては違法。
Q5:歩合給にも割増賃金は発生?
発生します。出来高払い制の割増賃金は0.25倍(通常分は出来高に含むとして、25%相当分のみ加算)で計算します(労基則19条)。
割増賃金は算定基礎・割増率・客観的時間把握・固定残業代の有効性の4点が実務の要です。中小企業の月60時間超50%割増、3年消滅時効、付加金リスクを踏まえ、未払いを発生させない給与体系・勤怠管理体制の構築が不可欠です。
TSR社会保険労務士法人では、給与体系の見直し・固定残業代の有効化・勤怠システム導入支援・未払い残業代の是正対応まで、ワンストップで支援いたします。
【2026年4月29日 今日のお知らせ】産休・育休中の社会保険料免除制度を完全解説。申請忘れで月10万円超の負担になるケースも。実務ポイントを総まとめ。
産前産後休業・育児休業中は、健康保険料・厚生年金保険料が労使ともに免除されます。本人負担も会社負担もゼロ、しかも将来の年金額には影響なし(保険料納付済期間として扱われる)という極めて有利な制度です。本記事では、2026年(令和8年)最新ルールに基づいて申請手続き・免除期間・注意点を完全解説します。
| 区分 | 対象保険料 | 本人負担 | 会社負担 | 将来の年金 |
|---|---|---|---|---|
| 産前産後休業(産休) | 健保+厚年 | ゼロ | ゼロ | 納付済として扱う |
| 育児休業(育休) | 健保+厚年 | ゼロ | ゼロ | 納付済として扱う |
※雇用保険料は対象外(賃金がゼロなら自動的に発生せず)。住民税は普通徴収切替が必要。
産前産後休業=出産予定日(または出産日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産日後56日までの期間。
具体例:2026年5月10日産休開始 → 5月分から免除。2026年8月20日産休終了 → 7月分まで免除(8月分は徴収)。
2022年10月1日以降の育休には新ルールが適用されています。
| パターン | 免除可否 |
|---|---|
| 育休開始日の属する月の月末も育休中 | その月から免除 |
| 育休が同月内で14日以上ある(短期育休) | その月も免除(2022/10改正で追加) |
| 同月内で育休が14日未満 | 免除なし |
例:2026年6月20日〜6月30日(11日間)の育休 → 14日未満なので免除なし。
2026年6月10日〜6月25日(16日間)→ 14日以上で6月分免除。
賞与の社会保険料免除は連続1か月超(暦上1か月超)の育休取得が必要。短期育休で賞与月だけ取得しても賞与は免除されません。
| 区分 | 書類名 | 提出先 | 提出期限 |
|---|---|---|---|
| 産休 | 産前産後休業取得者申出書 | 年金事務所 | 産休期間中 |
| 育休 | 育児休業等取得者申出書 | 年金事務所 | 育休期間中 |
| 変更時 | 取得者変更(終了)届 | 年金事務所 | 変更後速やかに |
※提出は事業主が行う。電子申請(e-Gov・GビズID)が便利。
休業中で報酬がゼロまたは大幅減でも、原則として標準報酬月額は変更されません(給与が出ていないため随時改定の要件を満たさない)。
復帰後、時短勤務等で報酬が大幅減になった場合、3か月平均で標準報酬月額を引き下げる特例あり。届出は「育児休業等終了時報酬月額変更届」。
3歳未満の子を養育する被保険者は、標準報酬月額が低下しても、年金計算上は従前の高い標準報酬月額で計算される特例あり。届出は「養育期間標準報酬月額特例申出書」。
| トラブル | 対策 |
|---|---|
| 免除申請を忘れて保険料を徴収してしまった | 2年以内に遡って申請可能。年金機構へ取消・還付請求 |
| 育休が予定より早く終了したが届出未提出 | 速やかに「終了届」を提出。延長分の保険料が発生 |
| 賞与免除のつもりで短期育休だったが免除されなかった | 2022/10以降は1か月超の育休が必要。事前にスケジュール確認 |
| 復帰後の時短勤務で標準報酬が高いまま | 育児休業等終了時改定の届出を忘れずに |
2022年10月「産後パパ育休(出生時育児休業)」創設により、男性も柔軟に育休取得可能に。
Q1:パート・アルバイトでも免除される?
健康保険・厚生年金の被保険者であれば対象。週20時間以上の特定適用事業所のパートも含む。
Q2:免除期間中も健康保険証は使える?
使えます。免除はあくまで「保険料」の免除であり、被保険者資格は継続。出産育児一時金・出産手当金も受給可能。
Q3:出産予定日と実際の出産日がずれた場合は?
実際の出産日基準で再計算。早産・遅産の場合は「変更届」を提出して期間を再申請。
Q4:育休を分割取得した場合、それぞれ申請が必要?
必要。2022年10月以降、育休は2回まで分割取得可能。それぞれ「取得者申出書」を提出。
Q5:会社の負担分も本当にゼロになる?
なります。労使折半の保険料が労使両方とも免除。会社にとっても産休育休取得を後押しする制度です。
産休育休中の社会保険料免除は、本人・会社双方にメリットの大きい制度です。申請忘れ・短期育休14日未満・1か月超未満の賞与免除ミスに注意して活用してください。
TSR社会保険労務士法人では、産休育休の申請書類作成・電子申請から、復帰後の給与設計・標準報酬月額特例の届出まで、ワンストップで支援いたします。
【2026年4月28日 今日のお知らせ】5月からの算定基礎届シーズンに備えて、対象者の絞り込みから保険者算定まで実務手順を解説します。
毎年7月10日が提出期限の「被保険者報酬月額算定基礎届」。健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額を1年間(その年9月〜翌年8月)固定するための重要手続きです。本記事では2026年(令和8年)の最新ルールに基づき、対象者の絞り込み・支払基礎日数・3か月平均の計算・修正平均・保険者算定まで実務手順を完全解説します。
算定基礎届は、被保険者の4月・5月・6月の報酬を基に、その年9月〜翌年8月の標準報酬月額を決定するための届出書です。これを「定時決定」と呼びます。
| 時期 | 実施事項 |
|---|---|
| 5月中旬 | 日本年金機構から算定基礎届用紙が事業所に到着 |
| 6月上旬 | 4・5月給与確定、賃金台帳整理 |
| 6月下旬〜7月上旬 | 6月給与確定、算定基礎届作成 |
| 7月1日〜7月10日 | 算定基礎届の提出期限 |
| 9月 | 新標準報酬月額が適用開始(10月給与から控除額変更) |
各月の報酬を「平均月額」として使うかどうかは、支払基礎日数が17日以上あるかで決まります(短時間労働者は11日以上、特定適用事業所のパートは別途)。
| 区分 | 判定基準 |
|---|---|
| 一般の被保険者 | 支払基礎日数 17日以上 の月のみ算入 |
| 短時間就労者(パート) | 17日以上の月で算定。なければ15日以上で算定。それもなければ従前の標準報酬月額を継続 |
| 短時間労働者(特定適用事業所等) | 支払基礎日数 11日以上 の月のみ算入 |
支払基礎日数の数え方:
| 含まれる(金銭) | 含まれる(現物) | 含まれない |
|---|---|---|
| 基本給、家族手当、住宅手当、通勤手当、残業代、皆勤手当、役職手当 | 食事の現物支給、社宅貸与(時価相当)、定期券支給 | 賞与(年3回以下)、傷病手当金、出張旅費(実費)、結婚祝金、退職金 |
注意:年4回以上支給される賞与は「報酬」とみなされ、月給を12等分して各月に按分します。
4・5・6月の報酬合計を、支払基礎日数17日以上の月数で割って平均月額を出します。
計算例:
| 月 | 報酬 | 支払基礎日数 | 算入 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 320,000円 | 20日 | ○ |
| 5月 | 310,000円 | 16日 | ×(17日未満) |
| 6月 | 305,000円 | 22日 | ○ |
平均月額 = (320,000 + 305,000) ÷ 2 = 312,500円 → 標準報酬月額は等級表で「320,000円」(22等級)
4月以降に昇給があり、4・5月分の差額が6月にまとめて支払われた場合、本来の月額に按分して計算します。これを「修正平均」と呼びます。
例:4月昇給(5,000円アップ)、5月給与に4月分差額5,000円含む場合 → 4月給与に+5,000円して再計算。
3か月平均と従前の標準報酬月額に著しい乖離がある場合、年金機構が「保険者算定」で適切な月額を算定します。主なケース:
※特定の法人(資本金1億円超等)は電子申請が義務化されています。
Q1:算定基礎届の結果、保険料が大きく変わるのはいつから?
9月分保険料から適用。給与天引きは10月給与(9月分後払いの場合)または9月給与(当月控除の場合)から変更されます。
Q2:4月入社の新人も算定対象?
対象です。ただし、4月の支払基礎日数が17日未満なら4月分は算入せず、5・6月の平均で算定。
Q3:6月に賞与が出た場合、算定に含める?
含めません(年3回以下の賞与は「報酬」ではなく「賞与」扱い)。賞与支払届で別途届出。
Q4:算定基礎届を出さないとどうなる?
健康保険法等違反で6か月以下の懲役または50万円以下の罰金。実務上は年金機構から督促・職権算定が行われます。
Q5:随時改定(月変)と算定基礎届の関係は?
7月・8月・9月に月変対象となる者は算定基礎届の対象外(月変が優先)。算定基礎届の備考欄に「月額変更予定」と記載します。
算定基礎届は、その後1年間の社会保険料を決定する労務担当者最大の山場です。支払基礎日数・修正平均・保険者算定の3つを正しく押さえれば、ほとんどのケースで対応できます。
TSR社会保険労務士法人では、算定基礎届の作成代行から電子申請対応、月変連動チェックまで、ワンストップで支援いたします。
【2026年4月25日 今日のお知らせ】労働保険の年度更新シーズンが到来しました。申告書到着〜納付完了までの実務を一気通貫で解説します。
毎年6月になると届く「労働保険概算・確定保険料申告書」。6月2日〜7月10日の間に、前年度の確定保険料の精算と当年度の概算保険料の申告・納付を行う重要な手続きです。本記事では、賃金集計から納付完了までの実務手順を、2026年(令和8年度)の最新料率対応で解説します。
労働保険(労災保険+雇用保険)は、毎年4月1日から翌年3月31日までを保険年度とし、年度ごとに保険料を申告・納付します。年度更新では以下の2つを同時に行います。
| 時期 | 実施事項 |
|---|---|
| 5月下旬 | 申告書類が事業所に到着 |
| 6月上旬〜中旬 | 賃金集計・申告書記入 |
| 6月2日〜7月10日 | 申告・第1期保険料納付期限 |
| 10月31日 | 第2期保険料納付期限 |
| 翌年1月31日 | 第3期保険料納付期限 |
令和7年4月1日〜令和8年3月31日に支払った賃金が対象です。
| 含まれる | 含まれない |
|---|---|
| 基本給、賞与、残業代、通勤手当、住宅手当、家族手当 | 退職金、結婚祝金、傷病手当金、出張旅費(実費弁償)、解雇予告手当 |
| 区分 | 料率 |
|---|---|
| 雇用保険(一般の事業) | 労使合計 14.5/1,000(事業主9.0、被保険者5.5) |
| 雇用保険(建設の事業) | 労使合計 16.5/1,000(事業主10.5、被保険者6.0) |
| 労災保険(業種94 その他の各種事業) | 3/1,000 |
| 労災保険(業種38 既設建築物設備工事業) | 9.5/1,000 |
| 労災保険(業種37 その他の建設事業) | 15/1,000 |
| 一般拠出金 | 0.02/1,000(全業種共通・石綿健康被害救済財源) |
申告書の核心は「差引額」の計算です。
具体例:申告済概算30万円、確定25万円の場合 → 5万円が当年度概算へ充当(第1期から順に充当)。
概算保険料は3期分割が可能です(一括納付も可、ただし減額メリットなし)。
| 期 | 納付期限 | 計算式 |
|---|---|---|
| 第1期 | 7月10日 | 概算/3 − 充当額 + 不足額 |
| 第2期 | 10月31日 | 概算/3(残充当があれば差引) |
| 第3期 | 翌年1月31日 | 概算/3(残充当があれば差引) |
建設業(業種35〜38)は、労災保険と雇用保険を別々に申告します(二元適用)。
労働保険事務組合に委託すると、以下の特典があります。
Q1:賃金台帳がない場合、どう集計すればよい?
給与明細控え、源泉徴収簿、出勤簿等から逆算します。手間と精度の観点から、給与計算ソフトの導入を強く推奨します。
Q2:途中入社・退職者の賃金も含めるの?
含めます。在籍期間中に支払った賃金が集計対象。中途退職者の退職金は対象外です。
Q3:概算保険料が前年比で大きく増減した場合の注意点は?
概算が前年度の2倍超または1/2未満になる場合、見込賃金額の合理性を労働局から問われることがあります。事業計画書等の根拠資料を準備しましょう。
Q4:申告期限を過ぎたらどうなる?
追徴金(年14.6%)と延滞金が課されます。期限内申告が困難な場合は、早めに労働局へ相談を。
Q5:従業員ゼロ(社長一人)でも年度更新は必要?
雇用保険被保険者がいない場合、雇用保険は不要。労災は特別加入の場合のみ申告必要(事務組合経由)。
労働保険の年度更新は、毎年6〜7月の労務担当者にとって最大の業務イベントです。賃金集計の精度・期限厳守・充当処理の正確性が3大ポイント。事務組合委託や電子申請を活用して、効率的に乗り切りましょう。
TSR社会保険労務士法人では、年度更新の代行から個別事業所の事務組合移行サポートまで、ワンストップで対応いたします。
【2026年4月24日 今日のお知らせ】
2019年4月から施行された「年次有給休暇の年5日取得義務」。違反すると30万円以下の罰金が科される重要ルールですが、中小企業では対応漏れが多いのが現状です。本日は付与ルール・取得義務・違反時の罰則を実務目線で整理します。
「うちは小さな会社だから有給休暇は関係ない」──そう考えていませんか?年次有給休暇は労働基準法39条で定められた労働者の権利であり、事業規模を問わずすべての事業場に適用されます。さらに2019年4月からは年10日以上の有給付与者に対して年5日の取得が義務化され、違反には罰則もあります。本記事では、中小企業の経営者・労務担当者が押さえておくべき年次有給休暇のルールを、付与の基準から管理簿の作成、罰則まで一気通貫で解説します。
年次有給休暇(以下「年休」)とは、労働者が取得しても賃金が減額されない休暇のことです。労働基準法39条により、次の2つの要件を満たす労働者に対して付与が義務付けられています。
これはパート・アルバイト・契約社員など雇用形態を問わず適用されます。「正社員だけに付与している」という運用は違法です。
フルタイム労働者(週所定労働時間30時間以上または週所定労働日数5日以上)の付与日数は以下のとおりです。
| 継続勤務年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
週所定労働日数4日以下かつ週所定労働時間30時間未満のパートタイマーには、比例付与のルールが適用されます。
| 週所定労働日数 | 年間所定労働日数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
働き方改革関連法により、2019年4月1日から年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、年5日を確実に取得させることが使用者の義務となりました。これは労基法39条7項に規定される強行規定です。
「年5日」の数え方は、労働者ごとの基準日(有給が付与された日)から1年間で判断します。入社時期がバラバラだと管理が煩雑になるため、多くの中小企業では「全社一斉付与」(例:4月1日に全員一斉付与)を採用しています。
年5日の取得義務に違反した場合、労働者1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります(労基法120条)。10人違反すれば300万円です。付与ルール違反(39条1〜3項違反)については6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条)と、さらに重い罰則が規定されています。
実際の運用では、労働基準監督署の是正勧告 ⇒ 改善報告書の提出 ⇒ 再調査という流れで対応することが多いですが、悪質な場合は書類送検されるケースもあります。
2019年4月からは、年10日以上の年休が付与される労働者について年次有給休暇管理簿の作成・3年間保存が義務化されました(労基法施行規則24条の7)。管理簿には次の3項目を記載します。
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 時季 | 実際に取得した日付 |
| 日数 | 取得日数 |
| 基準日 | 年休が付与された日 |
労働者名簿や賃金台帳と合わせて作成することも認められます。エクセルや紙での管理でも構いませんが、勤怠管理システムとの連携が省力化の王道です。
年5日の確実な取得を実現する方法として、「計画的付与制度」の導入が非常に有効です。これは労使協定を結び、年休のうち5日を超える部分について会社が取得日を計画的に指定できる制度です(労基法39条6項)。
例えば「お盆の前後3日を計画年休」「年末年始に追加で2日を計画年休」とすれば、合計5日を確実に消化させることができます。
原則として労働者は自分の希望する日に年休を取得できます(時季指定権・労基法39条5項)。ただし、会社側には例外的に時季変更権があり、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り他の日への変更を求めることができます。
ただし「忙しいから」「人手不足だから」という理由だけでは時季変更権を行使できません。判例では代替勤務者の確保を会社が真剣に試みたかが問われます(最判昭62.7.10 弘前電報電話局事件)。
「有給を使わない分、お金で買い取って」という話がありますが、労基法39条の趣旨に反し、原則として違法です。ただし以下の3ケースに限り買上げが認められています。
年次有給休暇を適正に運用するための実務チェックポイントをまとめました。
年次有給休暇は、労働基準法が定める労働者の権利であり、会社の義務です。とくに2019年4月からの「年5日取得義務」は罰則付きの強行規定であり、事業規模に関係なく対応が必須です。管理簿の整備、就業規則の見直し、計画的付与の導入など、やるべきことは多岐にわたります。「気づいたときには監督署から是正勧告」とならないよう、今のうちに自社の運用を総点検しましょう。
TSR社会保険労務士法人では、就業規則の見直しから年休管理システムの導入支援、労使協定の作成まで、中小企業の労務管理をワンストップでサポートしています。「うちの運用は大丈夫か不安」「有給管理簿をきちんと整備したい」というご相談、お気軽にお寄せください。
【2026年4月22日 今日のお知らせ】
2026年度(令和8年度)の社会保険料率が改定されました。協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率の新料率、そして厚生年金保険料率の取扱いを、給与計算担当者向けにまとめました。4月分(5月納付)または5月分(6月納付)からの切替が必要ですので、必ず確認してください。
毎年3月〜4月になると、協会けんぽ(全国健康保険協会)から新年度の保険料率が公表されます。2026年度も例外ではなく、健康保険料率・介護保険料率ともに改定されました。
このページでは、2026年度の社会保険料率の改定内容と、給与計算実務での切替タイミング、よくある失敗、遡及修正が必要になったときの対応までを社労士の立場で整理します。
2026年度(令和8年度)の社会保険料率改定のポイントは以下の3点です。
注意点は、協会けんぽの改定は「3月分」からという点です。3月分の保険料は4月納付(=4月末引落し)となり、給与天引きでは4月支給給与から新料率というのが一般的です(翌月控除の事業所の場合)。
| 都道府県 | 改定方向 | 備考 |
|---|---|---|
| 東京都 | 微増 | 医療費水準の上昇反映 |
| 大阪府 | 微増 | 同上 |
| 愛知県 | 据置〜微増 | 地域差あり |
| 福岡県 | 微増 | 全国平均を上回る水準 |
| 北海道 | 微増 | 上位水準を維持 |
具体的な料率は毎年3月上旬に協会けんぽHPで公表されます。自社の所在地の料率は必ず最新の公式情報をご確認ください。
介護保険料率は全国一律で、協会けんぽが毎年見直します。40歳以上65歳未満の被保険者(第2号被保険者)の給与から控除するものです。
40歳の誕生日の前日が属する月から徴収開始、65歳の誕生日の前日が属する月から徴収終了となります。誕生日の管理ミスが毎年の税務調査・年金事務所調査でよく指摘されます。
厚生年金保険料率は、平成29年(2017年)9月を最後に18.300%で固定されています。労使折半で各9.15%ずつの負担となります。
ただし、毎年9月の定時決定(算定基礎届)で等級が変わると、保険料額自体は変動します。料率は変わらなくても、標準報酬月額が上がれば保険料は上がる点に注意してください。
保険料の切替タイミングは、給与からの控除方式によって異なります。
| 控除方式 | 3月分保険料の控除タイミング | 新料率適用開始 |
|---|---|---|
| 翌月控除(多数派) | 4月支給給与から控除 | 4月支給給与 |
| 当月控除 | 3月支給給与から控除 | 3月支給給与 |
多くの中小企業は「翌月控除」です。この場合、4月支給給与の計算から新料率を反映することになります。
毎年、以下のような失敗が発生します。
発見した場合の対応:誤った月分まで遡って差額を精算します。給与明細に「保険料調整」として表示し、従業員へ理由を説明することが必要です。
保険料率改定と標準報酬月額の改定(随時改定)は別物ですが、給与担当者は両方を並行して管理する必要があります。
固定的賃金が変動した月から3か月連続で2等級以上の差が生じた場合、月額変更届の提出対象です。料率改定と等級改定が重なる月は特にミスが起きやすいので、ダブルチェックをお勧めします。
なお、社会保険料率の改定とは別に、労働保険(労災・雇用)の年度更新が6月1日〜7月10日に行われます。こちらも令和8年度の料率で概算保険料を計算することになります。
社保と労保は別制度ですが、給与計算では同じ月の給与から同時に控除するため、担当者は両方の改定を見落とさずに反映する必要があります。
Q1. 4月支給給与から新料率に切り替えるのを忘れていました。どうすればいいですか?
A. 判明した月の給与で、過去月分の差額をまとめて精算します。従業員には給与明細でどの月の差額か明記し、理由を説明してください。年末調整には影響しませんが、社会保険料控除の累計額が変わりますので控除証明の再計算が必要です。
Q2. 東京本社と大阪支店で料率が違う場合、どう管理しますか?
A. 健康保険料率は事業所の所在地(=加入している協会けんぽ支部)の料率を使います。東京本社加入者は東京都、大阪支店が独立して加入なら大阪府の料率です。給与ソフトで事業所別マスタを分けて管理してください。
Q3. 介護保険料の徴収は、40歳の誕生月からですか?
A. 40歳の誕生日の前日が属する月から徴収開始です。例えば5月1日生まれの方は、4月30日が誕生日の前日となるため4月分から徴収開始となります。誕生月=徴収開始月ではない点にご注意ください。
Q4. 厚生年金保険料率は今後も18.300%のままですか?
A. 現時点では法定上限として18.300%で固定されています。ただし将来的な財政検証で見直される可能性はゼロではありません。最新情報は日本年金機構HPでご確認ください。
Q5. 賞与の保険料率も同じタイミングで改定ですか?
A. はい、毎月給与と同じ料率です。ただし賞与は支給月の料率を適用します。4月支給賞与なら新料率、3月支給賞与なら旧料率となります(翌月控除の場合でも賞与は当月適用)。
社会保険料率の改定は毎年のことですが、マスタ更新漏れ・対象者リスト作成漏れが毎年どこかで発生します。差額精算は事務負担が大きく、従業員の信頼も損ねます。
TSR社会保険労務士法人では、給与計算のアウトソーシングで料率改定・算定基礎届・月額変更届まで一気通貫でサポートしています。「ミスできない」「人手が足りない」とお悩みの経営者様はお気軽にご相談ください。
【2026年4月21日 今日のお知らせ】
5月中旬に市区町村から送られてくる「住民税決定通知書」の受取と、6月給与からの特別徴収切替は毎年の定番業務です。ミスが起きやすい箇所・退職者対応・新入社員の扱いまで、社労士が実務目線で解説します。
「5月に届く住民税決定通知書、どう処理すればいい?」「退職した社員の住民税はどうなる?」――毎年6月の給与計算シーズンに必ず寄せられるご相談です。
本記事では、住民税の特別徴収切替について、切替のスケジュール・手続き・退職者対応・新入社員対応・よくあるミスまでを、現役社労士が2026年最新版で解説します。
住民税の徴収方法には2種類あります。
常時雇用する従業員については、事業主に特別徴収を行う義務があります(地方税法321条の4)。 「面倒だから普通徴収のまま」「うちは小さいから」といった理由で特別徴収をしないことは法律上認められていません。
| 時期 | 事業主の業務 |
|---|---|
| 〜2026年1月31日 | 給与支払報告書を市区町村へ提出 |
| 2026年5月中旬 | 市区町村から「特別徴収税額決定通知書」到着 |
| 2026年5月下旬 | 従業員へ個人用通知書を配布 |
| 2026年6月給与 | 新年度の住民税額で特別徴収スタート |
| 毎月10日 | 前月分の特別徴収税額を市区町村へ納付 |
| 2027年5月 | 年度最終月(翌年度の通知を待つ) |
5月中旬に市区町村から事業所宛に届く「特別徴収税額決定通知書」を受け取ったら、次の3点を即確認します。
給与ソフトに新年度の住民税額を登録します。主要な給与ソフト(弥生・freee・マネーフォワード・JDL等)はeLTAX連携で税額データを自動取り込み可能です。手入力は入力ミスの温床ですので、可能な限り電子データで取り込むことを強く推奨します。
退職者が出た場合、住民税の残額(翌5月分まで)の取扱いは退職時期により3パターンに分かれます。
残額を一括徴収することが原則(地方税法321条の5第2項)。最終給与・退職金から天引きします。
本人選択で①一括徴収②普通徴収切替③転職先で特別徴収継続のいずれか。希望を確認し、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を市区町村へ提出します。
転職先が決まっている場合、異動届に転職先情報を記載すれば住民税のスムーズな引継ぎが可能です。
4月〜5月に入社した新入社員・中途入社者は、原則として入社当初は普通徴収になります(前職の特別徴収が引継がれていない場合)。
特別徴収した住民税は、翌月10日までに市区町村へ納付します。期限を過ぎると延滞金が発生し、悪質な場合は督促・差押えにまで発展します。
なお、従業員10名未満の事業所は市区町村への申請により納期の特例(年2回納付)が利用可能です。6月〜11月分を12月10日まで、12月〜5月分を6月10日までにまとめて納付できます。事務負担を減らしたい小規模事業所は活用を検討してください。
法令違反。必ず本人交付を。封書のまま手渡しが基本。
発覚時点で即修正。翌月給与で差額調整します。本人への事前説明を忘れずに。
最終給与の金額によっては天引きできないケースあり。退職前の面談で説明しておくのが鉄則。
転居した従業員がいる場合、翌年度の通知書が届かなくなります。毎年1月の給与支払報告書提出時に現住所を必ず反映。
給与が出ない期間は特別徴収できません。休業前に一括徴収するか、普通徴収へ切替を本人と相談し、市区町村へ異動届提出。
A. 拒否は認められません。 事業主の法定義務です。本人が「普通徴収にしたい」と言っても事業主が応じる法的根拠はありません。
A. 雇用形態にかかわらず、前年中に給与支払を受けた全員が原則対象です。ただし月額報酬が極端に少ない等、市区町村が普通徴収と判断するケースもあります。
A. 必要です。役員も「給与所得者」に該当し、特別徴収の対象になります。
A. 年税額を12で割り切れない端数を6月に寄せる処理のためです。7月以降は同額になります。
A. eLTAX(地方税共通納税システム)を使えば、全国の市区町村へ一括電子納付が可能です。銀行窓口・複数の納付書管理から解放されます。
6月の切替作業そのものは、5月中旬に届く通知書を正確に処理できていれば8割完了しています。通知書到着後すぐの対応、個人用通知書の本人配布、退職者・新入社員の異動届を漏らさないこと――この3点を押さえれば、毎年6月の給与計算は慌てません。